不妊症の定義1年はちょっと古い

昔に比べると「不妊」という言葉が一般的になってきたように思います。芸能人が不妊治療をブログで公開したり、知恵袋や不妊関連サイトで悩みを相談できる時代ですね。

本屋では不妊をテーマにした書籍がたくさん並んでいて、最近では漫画コミックにもなったりしていますね。それだけ不妊が社会の中でも重要視されている悩みのひとつと言えます。

不妊治療も昔に比べると専門病院が増え、検査や治療をしやすい環境がずいぶん整ってきたと感じます。

少し前に、日本産婦人科学会による不妊の定義が変更されました。これまでは「夫婦で妊娠を望んでから、2年の間に妊娠しない場合は不妊」という定義でしたが、2015年からは「避妊せずに1年の間に妊娠しない場合は不妊」という定義に変更されました。2年から1年に引き下げたことになります。

年々、不妊症で悩まれているご夫婦が増え、今では7組に1組の夫婦が不妊と言われています。1人目はすぐ妊娠できたのに、出産をきっかけにホルモンのバランスが崩れて、生理不順や基礎体温が乱れたり、1人目を授かった年齢が高く、いざ2人目をつくろうとしても、卵子の老化や卵巣年齢が高くなっていて、2人目がなかなかできないといった2人目不妊のお悩みも多くなっています。

不妊の定義は「妊娠を望んでから1年たっても妊娠しない」かもしれませんが、現代社会では女性の結婚が遅くなり、仕事をしている女性は結婚しても仕事を続けることが多くなっています。家事と仕事を両立しながら、子供をつくる時間を作るのは並大抵のことではありません。

働き盛りの30代~40代の女性が、仕事のストレスなどにより生理周期が乱れ、妊娠までにますます時間がかかってしまう時代に入っているのです。昔とは環境が違ってきた今、「妊娠を望んで1年以上」=「不妊」という定義ではないと私は感じています。

体外受精の成功率は世界50ヶ国中、日本は45位と低い結果ですが、これは体外受精に臨む女性の年齢が高いからだと言われています。晩婚化とともに不妊率が上がっている結果といえます。

下の表は、昭和50年から平成21年までの女性の初婚年齢と出産時の年齢です。昔に比べると、5歳近くも結婚年齢が高くなっているのがわかります。それに伴い、出産年齢も高くなっていますね。

表の数字のなかで注目すべきは、結婚してから子供ができるまでの期間です。昭和50年では、結婚してから約1年半ほどで第一子を出産していますが、平成21年では、結婚してから2年以上かかってから出産している結果が出ています。

妻の初婚年齢(歳) 第一子出産年齢(歳) 結婚してから出生までの期間(歳)
昭和50年 24.7 25.7 1.55
昭和60年 25.5 26.7 1.61
昭和63年 25.8 26.9 1.66
平成6年 26.2 27.4 1.75
平成12年 27 28 1.89
平成17年 28 29.1 2.09
平成21年 28.6 29.7 2.19

不妊とは結婚してから1年以上たった夫婦のこと、という定義がありますが、この数字を見る限りでは、昭和50年の頃と現代では、社会の背景や環境も違い、結婚、出産までの年齢にも変化があるのですから、1年という不妊の定義に振り回される必要はないということですね。

結婚してから1年が経過していたとしても、仕事でなかなかタイミングを取れないこともあります。タイミングを取った回数によって、妊娠までに1年以上かかることだってあります。逆に言うと、半年間タイミングもたくさん取っていても妊娠せず、生理周期に乱れがあるようなときは、結婚して半年しかたっていなくても、不妊の可能性があります。

結婚して1年たったから = 不妊治療 ではありません。
結婚して1年未満でも基礎体温に乱れがある = 不妊の可能性あり ということですね。

不妊は病気じゃない、と言いますが、不妊の原因に病気が隠れていることもあります。結婚してからまだ1年たっていないから不妊の検査をしない、ということではなく、生理の様子がちょっとおかしいなと思ったら、結婚年数に関係なく、早目の検査をすることが妊娠への近道といえます。

そもそも不妊に年数の定義っているんでしょうか。2年から1年に引き下げたことで、「晩婚化に伴う不妊への意識を高め、早目に検査や治療に取り組んで子供を産みましょう」というニュアンスです。

結婚して1年間避妊せずに夫婦生活を営み、それで妊娠しなければ「不妊だからね」って定義として言われてもピンときませんよね。「避妊せずに」っていうところがポイントだと思いますが、忙しく働いている夫婦がしょっちゅうタイミングがとれるか、というと難しいし、排卵日を意識せずに月イチのタイミングで妊娠できる確率は低いですよね。

不妊の定義としては「排卵日を意識して、避妊なしの夫婦生活を営んでも妊娠に至らない場合」ということを付け加えないと、誰もが不妊だということになってしまう気がします。

きちんとした機関が決めた「定義」ってわりと重いです。とくに数字のしばりは気持ちを乱されてしまいます。「私って不妊なの!?」と思うことが精神的に追いつめられる原因になることもあります。

「不妊とは」、と定義をつける着地点が、「早目に検査をしましょうね」ということであれば、

正しい不妊の定義は、「排卵日を意識して、避妊なしの夫婦生活を営んでも1年以上妊娠に至らない場合は、不妊予備軍の可能性があるので早目に検査をしましょう」というアナウンスにするべきだと思います。

色んな背景があるかもしれませんが、1年=不妊 というのはちょっと焦らせすぎ、、という感が否めません。