卵子の老化と卵巣年齢の基礎知識

「卵子の老化」と「卵巣年齢」の違い

「卵子の老化」と「卵巣年齢」は不妊の原因としてよく耳にしますね。どちらも「年齢」や「老化」がつくので同じことを言っているのか、ちょっとややこしいのですが、この2つは別の問題ということがわかりますか?卵巣年齢は「残りの原子卵胞の数」ですが、卵子の老化は「卵胞の質」なんです。

残りの原子卵子の数が多くても、卵子の老化が進んでいれば妊娠率は下がってしまいます。反対に、原子卵子の数が少なくても、若々しい質の高い卵子であれば、妊娠率は高くなるといえます。

卵子はいつまでも若く正常な受精能力を持ち続けるわけではありません。女性の場合、35歳から生殖機能が少しずつゆっくりと下がってきます。35歳なんて早いですよね。女性の晩婚化と仕事の両立で、さあ子供を作ろう!という頃に卵子の数が減っていて老化しているなんて、学校でも誰も教えてくれなかったことです。

卵巣年齢知りたい?知りたくない?

卵巣年齢がわかるようになるなんて、少し前までは考えられませんでした。卵巣年齢を知るには、AMH(アンチミューラリアンホルモン)検査が必要になります。AMHは発育途中の卵胞のまわりから出ているホルモンで、血液中のAMH値を検査すればホルモンの量から卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかがわかります。AMHは他のホルモンと違い、月経周期のいつでも測ることができ、検査の費用はだいたい1万円くらいです。

  • AMHの量が多い

AMHの量が多ければ、これから育ってくる卵胞がまだたくさんあるという指標になります。
AMH値が4.0~5.0ng/ml以上ある場合は、小さな卵胞がたくさんできてしまう多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性がありますので、高すぎる場合も注意が必要です。

  • AMHの量が少ない

AMHの量が少ないと残りの卵胞が少なく「卵巣年齢が高い」ということになります。AMH値が0でも卵胞が0ということではないので妊娠するケースはありますが、AMH値が1ng/ml以下の方は不妊治療を急ぐ必要があります。

年齢別AMH値の基準値

 年齢  AMH値の目安
 25~30     7ng/ml
 30~35    6.31 ng/ml~4.75ng/ml
 36~40    3.82 ng/ml~3.18mg/ml
 41~45    2.44 ng/ml~1.31ng/ml
 46~50    1.00ng/ml以下

AMH値が自分の年齢の基準値よりも低いと心配になってしまいますが、AMH値と妊娠率は必ずしも一致しません。卵巣年齢が高くても妊娠した例はたくさんありますので、質の良い卵子を育てることを考えたいですね。

AMH値から卵巣年齢(残りの原子卵胞の数)がわかるようになって、不妊治療の内容も、より個人にあわせたスケジュールを組めるようになったと思いますが、治療を急ぐあまりに体外受精へのステップアップが早くなって、体や気持ちの負担が大きくストレスを感じているご夫婦がたくさんいます。

ステップアップを決断するときは、先生の見解も重要ですが、負担の大きい女性の気持ちと、治療に対する夫婦の価値観の共有がとても大切だと思います。まだまだゆっくり治療を進めていきたいと思っていても、「卵巣年齢が高い」と言われステップアップを勧められたらとても悩んでしまいますよね。ついていけない気持ちのまま体外受精にステップアップした、という話もたくさん聞きます。

実際の年齢より卵巣年齢が高くても、卵子が元気で着床に必要な内膜が十分なら自然妊娠も可能ですし、卵巣年齢が低くても、排卵がうまくいかなかったり内膜の状態がよくない場合は、治療が必要になってきます。

卵巣年齢はあくまであとどのくらい卵胞が残っているかの目安でしかなく、卵巣年齢の数値で一喜一憂する必要はありません!(といっても考えてしまいますが・・・)

原子卵胞の数は生まれたときから決まっている

毎月1個の卵胞が育って排卵されますが、1年間に数十個程度の原子卵胞が起き上がってきているわけではないんです。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、毎日30~40個の原子卵胞が起きては消えていっているんです!月に計算すると1000個もなくなっていくことになります。なんだかすさまじい数ですね。その中で最終的に残ってくる卵子は若い人で5~20個、高齢になるほど数が少なくなります。成熟卵に育って排卵までいく卵子は数千の中から勝ち残った奇跡的な1個といえます。

卵子がうまく育ってこない

原子卵胞の数が少なくなると、毎月起きてくる卵子の数も少なくなり、卵子がうまく育たないことがあります。脳からは「あれ?ホルモン足りなかったのか、もっと出さなきゃ!」と過剰にホルモンを分泌します。たくさんホルモンが出るわけだからいいじゃん!と思いますが、卵胞を育てる「卵胞刺激ホルモン」が暴走しだすと、体は過剰ホルモンに慣れっこになって強い刺激が続くことにより、「無反応」になってしまうんです。

過剰な卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を抑え、卵巣機能を正常に戻す不妊治療をしている方もいらっしゃると思います。私も卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が高く、なかなか卵子が育たない経験をしました。卵子の老化と卵巣年齢(残りの卵子数)は別の問題ですが、30代後半から同時期に起こってくることで不妊治療を困難にしているんですよね。。

治療の力を借りることもあると思いますが、日頃から暮らしのなかで卵子の質を上げる(というか卵子の老化を進めないようにする)ことが大切です。

まとめ

これまでに何組ものご夫婦とお話をしてきましたが、一番多いお悩みは「年齢」です。40代の方にとったら「30代はまだまだ若い!」と思うかもしれませんが、33歳でもその方にとってみれば「若くない」悩みですし、20代のご夫婦にとっても年齢は気になるんです。

実年齢的には若い20代の女性のほうが卵巣が元気か、というとそうでもありませんし、30代後半の女性でも体質改善に取り組んですぐに妊娠される方もいらっしゃいます。また、40代で自然妊娠する方もたくさんいらっしゃいます。

AMHなど数値ではっきりと出てしまう結果も重要かもしれませんが、若ければいいとか、高齢だからダメとかではなく、卵子の質や子宮内膜の状態、その人が持っている生命力というか受胎力のように目に見えない力も妊娠の成功に大きく関係していると感じます。